一覧へ
夜の京都、明るいコンビニの前の静かな道路

FEELING ARCHIVE / いとおしい

22:07 / コンビニ · 夏

デートの最後に寄ったコンビニだけ、やけに覚えてる。

完璧な店より、レジの前で迷った二人。

思い出すきっかけ買い物袋

予約したレストランでは、ちゃんとした話をした。帰りのコンビニでは、なぜか十円高いアイスで真剣に悩んだ。二人とも買うものが決まったのに、棚の前から離れなかった。

入店したときの音楽だけがやけに明るかった。昼間なら何も感じない白い光が、外の暗さのせいで少し眩しい。二人とも財布は出せるのに、棚に並んだ新作のパッケージを眺めている。レジの列が進むたび、急いで決めるべき気がするのに、相手は真剣な顔で二つの味を見比べていた。

A SMALL SCENE / 創作会話

あなたそれ、いつも買うやつ?

相手いや、初めて見た。

あなたじゃあ冒険だ。

相手失敗したら半分食べてね。

創作した会話です。実際の誰かの発言や作品の引用ではありません。

次に会ったとき、相手が「あのアイスあったよ」と言った。

赤い信号の光が浮かぶ、夜の横断歩道
記憶のあわいに、別の景色がある。PHOTO INTERLUDE

WHAT WAS DIFFERENT

あのとき、何が残ったんだろう。

自分の好きな味を勧めようとして、やめた。相手が迷っている時間がおかしかったからだ。あのときはただ、一緒に選んで同じ店を出ただけだった。翌週、偶然見つけたパッケージが同じ色で、あの店の明るさまで一緒に戻ってきた。思い出したのは、どちらのアイスが正解だったかではなく、迷っていた相手の顔だった。

『これ買う?』と聞いたら、半分こするかもしれない。でも何も言わなかったら、それぞれ違うものを選ぶかもしれない。どちらでも成立する夜だった。小さな出来事だからこそ『こっちにするべき』という正解がない。二人で笑えたことを、後から特別な意味のある記号にしてしまうのは、自分の記憶の仕事だ。

WHY THIS STAYS

忘れられないのは、
こういうところ。

特別なイベントを頑張って作ったわけじゃない。その場にあった小さな選択を一緒にした。二人の間だけで通じる話題は、そんなところから生まれる。

コンビニの新商品コーナーを見かけるたび、ちょっとだけ目が止まる。

仕事帰りの同じチェーン店で、そのアイスを見つけた。買わなかった。ただレジの横で二秒ほど立ち止まり、値札を見た。あの日より十円上がっているらしい。自分がまだ覚えていたのはアイスの名前ではなく、あの夜の相手が言った『冒険だ』の言い方だった。通り過ぎてから、もう一度振り返りそうになった。

記憶の断片溶けかけのアイス夏 / いとおしい

IN YOUR OWN STORY

もし、似た日が来たら。

デートの帰りに寄り道をしたいなら「水買って帰る?」くらいで十分。相手が疲れていたらそのまま解散する。

ひとつだけ

深夜の寄り道や食べ物のシェアを当然と思わない。気楽に断れる提案にする。

レストランの名前は忘れたのに、アイスの味は覚えている。

MORE OF THIS FEELING / いとおしい

夜の車窓についた雨粒と滲む街の灯り同じ曲好きな曲が、一曲だけ増えた帰り道。ガラスにつく雨粒とぼんやりした街灯雨宿り雨がやむまでの、予定になかった十五分。
次の瞬間へ

架空の場面。特定の実話・SNS投稿・映像作品を基にしていない。

イメージ写真: Julien / Unsplash。写真は創作された出来事そのものを撮影したものではありません。

気持ちから探し直す